4.22.2010


早朝、真っ暗いうちに爪先立ちでお湯を沸かす。レンジの青い炎と、煙草の赤い光を交互に5分。 窓の外はまだ真暗く、朝の寝息は遠く、線路の向こう。




碧がまだ空に残っている頃、橋の上ではいまだに白い息が。影が暗く風景のすべてを一つ覆っている世界。ふと目を上げると、行きかう表情も鉄の時計台のように冷たくたちすくんでいる。マフラーに口をもぐらせて目を伏せたまま、奥へ奥へと進みていくと、刻々と朝日が木々や水面、道、それぞれにはっきりと輪郭を与えていく。周囲はようやくそれぞれ区別され、一つの大きな闇の塊から雑多な一つの世界となり、あたたかいコーヒーを手に暖を取る僕もはっきりとこの冷たい芝生と舗道の上の明確な存在なんだということに気がつく。勢い良く水面から吹き上がる水柱の切れ端に、きらきらと虹がひっかかる。無数の枯葉がぱっと飛び散り、遠くで犬がフリスビーを追いかけ、一心不乱に走っている。

4.05.2010


恩人の誕生日に送るのになにかいいものがあるかしらんと、参宮橋近くの骨董屋へ寄ろうと思った。雨と冷気で銀色の通りに人通りはあまりなく、すでに午後の気怠い時間だというのに、雨のせいか、まだ午前中のような引き締まった空気があふれている。商店街を抜けると、郵便局から出てきた老婆とぶつかりそうになる。老婆は姿勢を曲げるとにやりと笑って、傘をぱっと開いた。背の低い老婆が差すと、紺地にちょっと濃い色の桜の模様が入っている傘は僕の首の近くをひゅんとかすめて止まった。富ヶ谷方面に下ると、徐々に風が強く、渦を巻くような調子になる。コットンのセーターの内側に冷気が渦巻いて溜まるようで、少し身震いをする。左側に望む小学校の敷地から風と雨に張り付くようにして舞ってくる無数の桜の花びらがいくつも革靴とジーンズに張り付く。そういえば恩人は古い陶器とかじゃなくて、なにか古い眼鏡ケースを欲しがっていたなあ、と考えながら歩を進める。道はカーブを繰り返し、風は横から吹き続けている。気が付くと、自分が差している小さな透明のビニール傘のほとんどが濡れた薄いピンクの花びらで覆われて、ほとんど向こう側が見えなくなっていた。年末に障子を張り替える祖父の素早い手つきよりも早く、どんどん傘に張り付ていって僕の向こう側の世界を塞ぐ。ふと、ついさっきの、老婆が、ばっと目の前で傘を開いた光景が、フラッシュのように目の前によみがえる。
雨、風、濡れた靴の気持ち悪さ、濡れすぼんだ通り、この雨と桜で寒い一日。。。。それらは急に重力をなくしてしまい、僕はそれらを眺めながらまるで踏切の向こうでぽつんとしているみたいだ。
交差点の手前、一度大きく傘を降ったが、張り付いた無数の桜の葉はゆらゆらと数枚落ちただけで、大部分は透明のビニールに残り、たくさんの目のように、じっとこちらを見ている。